へりくつ剣道参考書

剣道家ブロガーのつぶやきです。大人から剣道を始めた自分だからこそ伝えられる内容を書いています。剣道に関するあれこれを、自分なりの解釈を交えながら綴ってまいります。

剣道範士十段について解説します ~剣道の最高段位は、昔は十段だった~

2022.4.13

一部情報に誤りがありましたので訂正しました。

 

 

 

みなさんこんにちは。

akikotapapaです。

 

現在、剣道における最高段位は八段となっています。

 

時々、インターネットで剣道範士十段という言葉を目にすることはないでしょうか。

 

実は、剣道の最高段位が八段ではなく、十段だった時代がありました。

 

そこで今回は、剣道範士十段についてお話ししようと思います。

 

 

■剣道範士十段の存在

ちょっと剣道の歴史を振り返ります。

 

剣道は昔大日本武徳会という名称で剣道をしていました。

 

しかし戦後になると、マッカーサーを最高司令官としたGHQによって、剣道が禁止されてしまいます。

 

その後、昭和27年に全日本剣道連盟として剣道が再開されました。

 

段位の規定は、大日本武徳会時代に制定されていた十段制を引き継ぎましたが、この時点ではまだ十段は存在しておらず、九段までの剣士しかいませんでした。

 

そして昭和32年、初の段位十段を発行することを決めたのです。

 

十段を受領されたのは、下記の5名でした。

 

・持田盛二 昭和32年授与

・斎村五郎 昭和32年授与

・中野宗助 昭和32年授与

・小川金之助 昭和32年授与

大麻勇次 昭和37年授与

 

この5名以外、後にも先にも十段を受領した人はいませんでした。

 

ちなみに、乳井義博という方も連盟から十段を授与されたものの、乳井先生自身が高野佐三郎という先生の方が十段に相応しいと判断し、連盟からの十段の授与を断ったことから、正式な十段としては名前が挙がっていないようです。

 

 

■十段は神様

十段というのは、それまで段位として設けられていたものの、空位のままでした。

 

最初に、中山弘道という先生に十段授与を打診したようですが、中山は拒絶したとされています。

 

その後、持田と斎村は、先人さえ受け取らなかった段位は受け取れないと拒否したものの、受けなければ制度が崩れてしまうという理由で渋々十段を受領したそうです。

 

そもそも十段というのは、剣道に関しては完全無欠の神様のようなものなので、十段を受領するということは、剣道の神様として認めると言うようなものです。

 

十段という段位を受領するということは、剣道界においてとてつもない責任が発生するということになるでしょう。

 

 

■十段誕生のパラドックス

範士や九段は、全日本剣道連盟評議員15名の内、12名以上の賛成で認められたと言われています。

 

十段もこれと同じか、もしくは15名全員の賛成で認められるものだったのかもしれません。

 

ここでひとつ疑問が生まれます。

 

誰が十段を認めるのか?

 

十段に推薦されるような剣士であれば、当然評議員15名に含まれるはずです。

 

今で言えば、範士八段の中から範士九段を生み出そうとするようなことだと思います。

 

これは、よほど素晴らしい先生でなければ、推薦されないでしょう。

 

また、周囲が十段に推薦するような先生であれば、持田や斎村が拒否したように「自分は十段に相応しくない」と辞退されるでしょう。

 

逆に十段を欲しがるような先生であれば、誰かが「NO」とすると思われます。

 

十段に相応しい人であれば辞退し、欲しがればもらえないという状態であれば、いつまで経っても十段は誕生しません。

 

この状態で、十段が評議員全員の15人ではなく、5人だけ誕生したということは、それだけ素晴らしい先生だったということなのでしょう。

 

 

■現在は八段まで

上記のような過去がありましたが、2000年には九段・十段の審査は行わないという風に規則が改定され、九段と十段は廃止されました。

 

では範士九段や範士十段の剣道はもう観れないのかというと、そうでもありません。

 

確かに、目の前で実際に拝見するということはもうできませんが、Youtubeなら観ることができます。

 

特に有名なのは、持田盛二範士十段でしょう。

 

Youtubeで検索してみると、かなりの動画がヒットすると思いますので、是非検索してみてはいかがでしょうか。

 

 

■まとめ

いかがでしたでしょうか。

 

今回は、剣道範士十段についてお話ししました。

 

範士十段というのは、それはもう凄かったのではないかと推測します。

 

もはや、今の八段と当時の八段が同程度だったのかすらわかりませんが、八段と十段の稽古では、八段の先生がいとも簡単にさばかれているような状態です。

 

もう何がどうなっているのやら、という感覚になります。

 

「考えるな、感じろ」なのでしょうか。。。

 

範士十段という位はもう存在しませんが、そのような剣士になれるように日々精進したいと思います。